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直海(のみ)谷に訪れるまでに、ずいぶんの月日が経ってしまった。
白山を本格的に歩き出して10年ほど経つが、直海谷に入渓するチャンスはなかなか来なかった。これは自らの"沢"出無精もさることながら、直海谷の地理的な問題も少なから引き金になっている。
直海谷は石川金沢に近く、この周囲の山々も白山の前衛峰から見れば標高も低くて"里臭い"ローカルな山域に思えてならなかった。また目立った遡行記録もほとんんど散見できなかったことも、こうした僕の一方的な思いこみを一層助長させる原因になったのだと思っている。しかし直海谷はそうした僕の勝手な臆見とは裏腹に、実に興味ある地貌を持つ谷だった。
しかしよくよく考えてみれば、北に二又川や倉谷川を控える谷、その一塊にあるこの直海谷が、そう容易い谷ではないことに気付かないことの方がおかしな話だった。いかに自分の認識が浅はかだったかを露呈してしまった感じだ。
直海谷本流は大きな流れを奥三方岳直下まで延ばし、変化に富んだ一大渓流をかたち作っている。しかし、その本流から分流する支流も本流に勝るとも劣らない連瀑の谷を形成しており、これをみてしても一帯が極めて遡行価値のある流域であることをあらためて実感させられる。
倉谷は直海谷中ではもっとも知られた谷ではないか。
両岸は発達した岩盤の廊下が中流域まで続き、その景観には目を見張るばかり。大滝の容姿も壮美なものばかりでとても素晴らしかった。
烏帽子山(1136m)から注ぐ各支流出合にはスラブ状滝が懸かり、この谷一帯が岩盤で形成された険しい渓相を持つことを伺わせる。しかし支流の滝は実に素晴らしい眺めだ。初溯行では遠くから眺めるだけでいっぱいだったが、次回は是非とも滝元に立って、これら滝を仰ぎ見ることができればと思っている。
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