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10月の中旬の寒い日だった。数日前から降り続いて雨は昨晩になってようやくあがったものの、現地大白川に到着すると、辺りの山々のてっぺんはすでに白い衣に包まれ始めていた。
大白川林道は今夏の大雨で林道が埋まり通行止め、本流も荒涼とした涸沢となって水音も消えていた。
姥ヶ谷は大白川のいちばん下流、右岸に位置する谷。本流と比較すればまるでちっぽけな支流だが、中身は思っていたより変化があって愉しめた。しかしさすがにこの時期の溯行になると、身を切るという言葉がぴったりなほど水は冷たい。適期なら豪快なシャワークライムや滝の登攀が愉しめるだろう。今回は自らの非力で大滝の登攀は成らなかったが、次回は是非とも挑みたいものだ。
ふと対岸に目をやると、トチの大木に黒いものが動いている。「あ!クマだ!」そう口にする間もなく体は硬直していた。クマは我々に気づいたのか、木から転げ落ちて、一目散で山肌を駆け上がっていった。
谷は1,746.1mへと向かってるが、時間切れで頂には立ててない。源流は谷も勢いを落とすが、蛇行する流れが延々と続いていた。
下山にはトチヌマを使った。この谷もひとつだけ懸垂を交えたが、あとは単調な下り。姥ヶ谷を引き返すより、この方が谷も短く遙かに下山は早い。
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