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特別思い入れは無かったが、岐阜県側白山に来て最初に溯行した谷がこの大白水谷だった。また白山を "裏側" から登るということは、自分にとってはたいへん興味があった。
大白水谷は、予想外に平凡だった。
しかし源流部に近づくにつれ広大なカール地形が迫まり、いつものあの碧々とした山ではなく、まるで 瓦礫の中に埋もれるような山の姿 になったのには驚いた。その涼としたモノクロ風景が今もはっきりと脳裏に焼き付いている。
源流部は積み重なった岩のくずになっている。その岩間に咲く 高山植物 が、荒涼とした斜面に一輪の彩りを与えていた。この見事な配置と色の組合せが、青空の下に映えていて実に眩しかった…。
一辺倒な谷歩きでは発見できないものがある。時には角度や視点を変え、目標物をあらためて眺めてみるのも時間の無駄ではない。たいていそういうときはこれまで気づかなかった別の一面に触れることができる。また険しさだけが谷の姿でもない。歩く喜び、望む愉しさが相まって、初めて溯行というものは充実するものではなかろうか。平凡な流れの中にも、浮かび、流れるものは数多い。目を凝らせばいろいろなものが見えてくる、僕はそう思う。
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