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手取川右岸の谷の中でも流程が長く、多くの支流を持つのがこの大嵐谷だ。支流については別項で触れるが、この本流もなかなか素晴らしい。この谷中にある40m
超のスラブ状大滝は、まるで大峰台高並のスケールを持っていて驚かされた。
入渓ルートは二つ。大嵐谷下流部林道終点から左岸の杣道を拾って入渓する手と、桑島から鳴谷山登山道に入り、大屏風のあるアトクチノ谷を下って大嵐谷本流に降り、そこから溯行をスタートさせるという手がある。おすすめは後者。これだと鳴谷山からは登山道を下るだけで車に戻れる。
つめは鳴谷山を目指すのもいいが、ピーク切り開きは東面の端にあるのでかなりの藪漕ぎを覚悟しなくてはならない。適当な支流を右に入り、早めに登山道に出るのがいいだろう。
鳴谷山は、今は廃道になった白山青柳新道の一角の山。以前は訪れる人もまばらなマイナーな山だったが、100名山ブーム、200名山ブームの波に乗って、休日には驚くほどの人が山頂を目指す。静かなのは沢の中だけ。だから沢は辞められないのだ。
99年秋、この谷に入渓した"軽装"の登山者が高捲き中に滝壺に転落、死亡した。奇しくもその方の遺体を遭難捜索で発見したのはこの私だった。
亡くなった者には申し訳ないが、美しい山や渓谷を軽率な行動で汚さないでほしい。死んで悲しむのは身内や家族だけではなく、谷歩きを愉しむ者に我々にとっても迷惑な話である。
"この谷には二度と足を運びたくない"。僕は翌年に行われた、追悼を兼ねた現地行のときにその思いを心に強くした。
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