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白山地獄谷は、白山書房刊「日本百名谷」にも掲載される、"銘渓"の一つらしい(笑)。確かにこの谷の持つ味は、白山という火山生成山岳の特徴を如実に表現した谷ではあるが、白山を代表する谷として、何故この地獄谷が挙げられたのだろうかと、疑問に思う白山フリークも少なくないと思う。
あの「日本百名谷」が日本を代表する100の谷でないということは明白だが、しかしここに掲載されてしまった事実は拭うことはできない。「白山=地獄谷」というこの安直な誤解は、きっと後世に綿々と受け継がれることになるだろう。しかし僕にとってはそれほど遡行意欲をそそられる谷ではなかった。
谷はゴルジュで始まるが、源流部が白山爆裂火口跡の火ノ御子峰(ひのみこみね)の真下を通過するため、常に崩落の危険にさらされる。時期が早ければ谷は荒れている場合があり、溯行適期はおのずと短くなる。またこんな中で雨にでも遭うと、逃げ場を失って危機に陥る。天気との兼ね合いも重要なポイントになる。例年源頭にスノーブリッジが残り、この通過が非常に厄介な時期もあるので用心は怠らない方が賢明だ。溯行適期は9月も終わり、10月初旬頃が残雪も落ちついて遡行も楽になるだろう。
噴泉塔群を越えてしばらくで、両岸が圧倒的にせり上がった豪快な景観の中にS字滝が現れ、いよいよ溯行スタート。地獄谷の厄介な滝群はどれも軽快な登攀や捲きを強いられる。途中の大滝は右岸トラバースが悪く、地獄谷の中で唯一緊張する場面に違いない。
しかし地獄谷は全体的に大味の谷。雑把に配置された滝群と、浮き石ゴーロの累々とした渓相はどこか全体にしまりがない。とは言え、けっして易しい谷ではないので、安易な志は払拭されたいのだが。
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